多良間ションカネー
今年も宮古民謡保存会が主催するコンクールを受験予定でいます。いよいよ今年は最高賞です。課題曲が3曲あるんですが、今日はその中の1曲「多良間ションカネー」について書いていきます。
私の中では課題曲3曲の中で最も難関に位置付けられている曲です(^^;
「多良間ションカネー」とは
昔、本島から(或いは宮古島の平良から)多良間島に派遣されていた役人と現地妻(ウヤンマ、ウェーンマ)との別れの悲痛な悲しみを歌った曲です。
多良間島だけではなくて、離島には主に税(人頭税)の取り立てを目的に役人が派遣されていました。役人ですから任期が決まっていて、任期が終わると帰任します。現地の妻子は結局置き去りにされ生き別れとなるワケです。
同じような状況は他の島でもあって、八重山の「与那国ションガネ」も役人と現地妻の別れを歌ったものですね。
現地妻といっても、もともとは派遣された役人の身の回りの世話をする者として、役人が現地に対して強要したとも言われています。一方、現地妻になると贅沢な生活ができるようになり、その女性と両親の税が免除されていました。その分、他の島民にシワ寄せが来ることになりますから、島民たちは現地妻になった女性を羨ましく思う気持ちと共に、妬ましくもあったようです。
このため、役人が帰任した後は村八分のようにされ、一族の墓にも入れなかったとのこと。
そんな背景から考えると、家族同様になって情が生まれ子まで授かった役人との別れを悲しんだだけでなく、その後に控える悲惨な生活への思いもこめられていたかもしれません。
役人と現地妻との関係では、役人を現地妻が迎える情景を歌った「石嶺の道」があります。
歌詞では我が子を連れて役人を迎えるシーンが歌われています。役人が再任されることはなかったとも言われていますから、実際に迎えているわけではなく、現地妻の叶わぬ願いを歌ったものかもしれませんね。
少し角度は違いますが、島の娘を現地妻にしようとする役人とそれを拒む娘の父親の掛け合いを歌った曲もあります。「豆が花」という曲で、これも最高賞課題曲の1曲。やはり難関です(大汗)
「多良間ションカネー」の歌詞
一、前泊道がまからよ マーン
下りゆ坂 路地からよ スウーリ
主が船迎いがよ スウーリ すが下りよ
前泊の前の道で
坂をおりて船着き場に行く通り
役人を迎えに行くよ
二、片手しや坊主小さうきよ マーン
片手ゆしや 瓶ぬ酒むちよ スウーリ
主が船うしゃぎがよ スウーリ すが下りよ
片手に坊やを抱いて
片手にお酒をもって
役人を見送りに行くよ
三、かぎ旅ぬ あやぐどぅすうでぃよ マーン
ちゆらゆ旅ぬ糸音どぅすうでぃよ スウーリ
糸ぬ上からよ スウーリ ちあかりゆしやよ
途中の無事を祈るよい歌を歌い
糸の上を通るようにお祈りします
(歌詞・訳:国吉源次流 工工四より)
一番の歌詞は新しい役人が着任するときの様子でしょうね。島民が迎えに出ていたのでしょうか。
それが二番では同じ場所から役人を見送るシーンになります。片手には役人との間に授かった坊やと、もう片手には酒をもって。
もう二度と会えない相手の航海の無事をただ祈るしかない姿が見えてきます。
多良間島で歌われる多良間ションカネーと宮古島で定着した多良間ションカネーでは、歌詞と曲調が若干異なっています。上の歌詞は宮古民謡保存会の、といいますか国吉源次流の歌詞を載せています。
多良間島の歌詞では、迎える場面がなく、一番から「主が船うしゃぎがよ」(ご主人の船を送ります)と歌います。また、3番では航海の無事を歌うのではなく、主人が出世をしてまた帰っていらっしゃい、と歌っています。(『琉球列島 島唄紀行〈第2集〉』より)
ションカネーについて
多良間ションカネーだけでなく、「〇〇ションカネー」「〇〇シュンカニ」という曲名がありますね。沖縄本島の「遊びションガネ」、冒頭で挙げた八重山の「与那国ションガネ」、西表には「船浮ションガネ」等があります。奄美にも「しゅんかね節」があります。
この「ションカネー」の意味ですが、「しかたがない」「しようがない」といった諦めの意味と解釈されることが多いようです。
『琉球列島 島唄紀行〈第2集〉』や『奄美民謡誌』(小川学夫)によると、このションガネ系統の歌は江戸時代中期以降に流行した流行歌「ションガイ節」の系譜とみられているようです。「ションガイ」の意味は一般に「しようがない」の意にとられているようで、本土から奄美、琉球に伝わっていく過程で「ションガイ」から「シュンカネ」「ションガネ」等に転化したのではないかとの説が唱えられています。
多良間ションカネーで言うと、別離の情けを諦観の中で歌っているところがタイトルに表現されているのだと思います。
「多良間ションカネー」(歌・三線:松山雅一)
私の師匠、松山雅一の多良間ションカネーです。
ということで、多良間ションカネーについて書いてきました。秋までになんとか仕上げてコンクールに臨みます!
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こちらはウチに来て1年経ったボタン嬢。
最近ようやくゴロゴロ喉を鳴らすようになってきました(^^)
今日も最後までお読みくださりありがとうございました!
ディスカッション
コメント一覧
ご無沙汰してます。
良い曲ですよね! でも難しそうなのは理解できる・・・・
そーいえば宮古島に行った際には、宮古民謡は一度も聴くことが出来ませんでした。
最高賞頑張って下さい。
ちなみに自分事ですけど、最近「恋語れ」を暗譜(よーやく暗譜出来たレベルですが)しました
でもいつどこでコンクルールは実施されるのでしょうか? みたいな感じです。
とよさん、ご無沙汰してます。
宮古民謡、私も宮古島ではちゃんと聴いていないです。
風の噂では、津波流、今年はコンクールやるとか。。
でも間空きましたが、沖縄民謡保存会で上を目指すのも手かと思います。
とよさんの目指すベクトルで選択が変わってくるかと思います。
いずれにせよ、今のままはもったいないと思います~
この曲が好きで時々ひとりで唄三線してますが、もちろん他人に聴かせるレベルではありません。
正式に習ってもいないから、宮古の人が聴いたら発音に失笑されるでしょうね。
それにしても、松山先生の高音は素晴らしいですね🎵
同じ調弦でやったら血管が切れそうです❗
kurosakiさん、ありがとうございます!
この曲本当に難しくて、煮詰まってしまいます(笑)
松山先生もそうですけど、その師匠の国吉源次先生も6とか7でやっておられます(^_^;)
高い方が良いという価値観もあるようですが、真似をすると全部ぶっ壊れそうなので、私は無理しないことにしています。
この曲は3くらいがやっとです(苦笑)