黒木の粉と瞬間接着剤
今日のタイトルにある「黒木の粉」。
なんじゃいそりゃ?と思いますよね。
はい。。
これは、三線の棹の材料になる黒檀を削る時に出る黒檀のオガクズのことです。
そして三線の製作や修理には欠かせないものなんですよ。
割れや傷は黒木の粉で埋める
先日の記事「黒木棹の補修② ~割れを埋める」で少しご紹介しましたが、三線の棹に使われる黒檀(黒木、クルチ)はとても硬い木で、比較的割れも出来やすくなります。
もちろん乾燥の仕方が良くて割れがない材もあったりしますが、極めて希少(=高価)です。なので、ちょっとした割れやヒビは予め埋めることで三線の棹として活用しています。
その材料となるのが冒頭の写真にある「黒木の粉」なのです。
この黒木の粉、割れや傷を埋めるだけではありません。
三線の棹は、荒割りした材に型紙で線を引いてから、大まかなアウトラインに鋸を入れ、ノミでシェイプし、あとはひたすら鋸ヤスリや棒ヤスリ、サンドペーパーで削って棹の形に仕上げていきます。
その間、馴れない時期には「あっ!」と言って削り過ぎることもあるワケです(笑)
そんな時も黒木の粉の出番となります。削り過ぎた箇所を黒木の粉で修復する場合は「肉を盛る」なんて言い方をします。
「自分にはこの棹ちょっと細過ぎかなぁ。。」なんて時も、ちょっと乱暴ではありますが、塗りを全部剥がして、野丸全体に肉を盛って削りなおすこともできるわけです。
それと、削り過ぎたカラクイを元の太さに戻すことも可能です。年月が経って、カラクイとカラクイ穴が削れてクルクル回ってしまうときなんかも、カラクイを太くしたり、カラクイ穴を狭くするために使えます。
とまぁ、三線作りの現場では魔法の粉とも言えるほど欠かせない存在なのであります。
黒木の粉の用途
- 割れや傷を埋める
- 削り過ぎた部分の肉盛り
- カラクイ穴やカラクイのレストア 等々
黒木の粉のお供は瞬間接着剤
さて、そんな黒木の粉ですが、どのように使うのでしょうか?
先日の記事では、糊や漆と混ぜて「刻苧(こくそ)」を作って使用しました。
このやり方は古来からの正統な手法ではあるんですが、作業に気が遠くなるほどの時間がかかってしまいます。
そこで登場するのが「瞬間接着剤」です。
刻苧だと傷を埋めるのに何日もかかってしまうところ、瞬間接着剤を使えばまさに「瞬間」。って当たり前か(笑)
深い割れや傷も比較的短時間で埋めていくことができます。
瞬間接着剤といっても、何でも良いわけではありません。
現在、三線作りの現場で主に使われているのは、こちらの2つ(私の知る限り)。
ひとつは「ALTECO(アルテコ)」のEE。
サラサラとして液状で、割れに粉を埋めたところに垂らしても、奥まで浸透して全体を硬化してくれます。
もう一つは「長春」のCA-155。
名前をみてのとおり、中国製ですね。こちらはあまりメジャーではないかもしれません。ネットで販売しているところも限られています。(いしかわワクワクショップさん等で購入できます)
アルテコと同じくサラサラとしています。
両方使用してみての感想ですが、長春の方が硬化が早く強力であるような気がします。あくまで「気がする」という印象ですが(笑)
使い方ですが、まずは埋めたい割れ目や傷の中に満遍なく垂らします。
そこに黒木の粉を詰め、さらに上から粉全体が湿るくらいに接着剤を垂らします。
固まってしまう前に、粉が隙間なく埋まるように小刀などで押し付けていきます。
後は乾いて固まるのを待つのみ。浅い傷でしたら数分で固まります。深い傷の場合は一度に埋めてしまわず、何度かに分けて処置する方が良いでしょう。で、一晩くらい置いた方がしっかり中まで硬化してくれます。
棹にできたピンホールのような穴だけでしたら、黒木の粉は使わずに瞬間接着剤だけで埋めたりもできます。
この場合、小さな穴には液が入っていきにくいので、接着剤を穴に垂らした後すぐに針などで穴をツンツン刺すと、穴の奥まで接着剤が行き渡ります。
それと注意事項ですが、比較的広い範囲に黒木の粉を使い、多めに瞬間接着剤を垂らすと、煙を発する場合があります。これは、毛細管現象により急速に表面積が拡がって、硬化反応も急速に進行することで高温を発生することによるものです。
瞬間接着剤を垂らした部分に直接手を触れる人はいないと思いますが、小刀で押さえつける時などはご注意ください。
木の粉は棹の色に合わせて
一言で黒木の粉と言っていますが、シラタの部分を埋めたい場合はどうすれば良いのでしょうか?
黒木ではなく、シラタを削った時に出るオガクズをとっておくのです。
茶色っぽいカマゴンもあったりしますね。
三線工房では3種類~の木の粉をストックして、補修や三線製作に使っているようですよ。
しかしまぁ、普通に三線を弾いているぶんには知らなくて良い情報ですね(^^;
ということで、今日もオタクなお話で失礼しました!
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え~。我が家にこのデコボココンビが来てから間もなく1年になります。
1年かかって、ようやく人間にも慣れてきてくれまして、飼い主としては嬉しい限りです。
毎度登場しますが、今後ともどうぞよろしくお願いします!
ディスカッション
コメント一覧
私も三線を沢山集め色々と見て弾いて試して来ました。そしてガッカリする三線もたくさんあり、部当ての酷さに驚く事も多々あります。
初心者の三線に多いカラクイが止まらない訳。。。
本張りなのに鳴らない三線、強化張りなんかでは人工革に負ける音がほとんどです。
沖縄の職人。。金儲けが優先してしまうのですか?
真面目な職人が可愛そうに思えてきます。
私は金属加工&樹脂加工の職人なので、工具は一通り持っておりますので簡単に加工が出来ます。
部当てという言葉も知らずにひでぇ〜合わせだなぁと、隙間を埋めて角度の調整をしてチルを張り直して鳴らしてみると。。。
先程とは打って変わって素晴らしい音が響くではありませんか!
面白くなりオークションやフリマアプリで買い漁り三線を10本程並べて、色々と試したりもしました。
いやぁ8割程が悪い。。。2割が真面目かなぁ。。
8割全てを部当てし直しましたが、1割程は元々チーガが悪いのか響きませんでした。
ならばとチーガを沖縄のショップから取り寄せ部当てしてみるととても良くなりました。
しかし強化張りのチーガにも張りの違いがはっきりとわかり、悪いものは4000円の人工革に確実に負けます。また本張りでも革の質で人工革に負ける程。。
結局60本程色々試しているうちに、自分で作って売ろうという考えに到達しました。
棹とチーガは取り寄せて組み立てて販売したりしております。
今は黒木、紫檀、ゆし木の棹で音の違いを楽しむ程になりましてそれぞれの相性などを研究しております。
またウマも色々と違う素材で作成して響きの研究をしてみたりもしました。
ブログを拝見して共感する事が多々あり、コメントをさせていただきました。
あー多分この前修理した◯◯パラの カラクイかぁ。。。やっぱりあのチーガの穴は消音の為かぁとか。。。せっかくの棹をわざわざ分割して響きを妨げてまで持ち運びする意味は?とか。。。
なのに軽く10万超えてますからねー
初心者で習いに来た人に売る三線ではないと思ったりしながら修理しております。
棹も名工と言われる方の者を数本手に入れ、部当てしましたが実に素晴らしいですね!
ただ一つ言える事は、真面目に作ってしまっては初心者用の三線では絶対に食べるまで稼げません。。(^◇^;)
そのため手抜きになってしまうのでしょうか?
だからと言ってちんだみもままならないものを沖縄三線として売るのもどうかと。。
来年沖縄へ行き三線組合で名工の作品を沢山見ていじってきます!
そして工房見学をして職人さんの意見も聞いて来ようと思っております。
東京三線工房様
コメントありがとうございます。
コメントに書いてくださったこと、一つずつに頷きながら拝読いたしました。
沖縄では真面目な職人さんがいる一方で、ビジネス優先、であれば一歩譲って理解できるのですが、単に手抜きで仕事をしているのではないかと疑いたくなる三線が少なからずあると思います。
最初のうちは私の巡り会った三線がタマタマで運が悪かったのかとも思いましたが、沖縄の三線工房や三線店を巡ったりり、三線仲間が持つ三線を見たりするうちに、残念な気持ちが上回るようになってきました。私のような単なる工作好きの素人に気付かれるようではお話にならないと思います。
部当てのお話など色々興味深いお話をありがとうございます。ブログの内容でお気づきの点があればご指摘いただけると嬉しいです。
東京でしたら、一度お目に掛かって直接お話をお伺いしたいです! 落ち着きましたらご連絡をさせてくださいませ。今後ともどうぞよろしくお願い致します。
お久しぶりです!
ブログは止まったままですね〜
私はまだ三線を作り続けております。
800梃以上の修理や販売をしてきました。
今は爪の研究にハマっております(笑)
コロナに気をつけて頑張りましょう!
コメントをいただきながら、大変失礼いたしました。ブラック企業に就職してしまい、ブログどころか三線も触らない日々が続いていました。
3月で辞めることができまして、そろそろ再開しようかと思っております。
また更新することができましたら、情報交換などさせてくださいませ。
お久しぶりです!
ブログは止まったままですね〜
私はまだ三線を作り続けております。
800梃以上の修理や販売をしてきました。
今は爪の研究にハマっております(笑)
コロナに気をつけて頑張りましょう!