三線の棹が欠けた時の補修方法

欠けた三線の棹

 

コロナ前のことですが、三線仲間で集まり酒を酌み交わしながらの歌会をよくしていました。ある時のこと、酒も進んだところで、持参した三線に足を引っ掻けて倒してしまったんです。

その結果が上の写真。
三線の顔であるチラの角が無残にも欠けてしまいました。悪いことに、気づいたのは翌日のこと。欠けた相方の在り処もわかりません。
酔うとこれだから駄目ですね(-_-;)

自戒の意味を込めて、今回は棹が欠けた時の補修方法を記しておきますので、参考にしてみてください。

 

塗りはがし

棹材本体の補修になるので、まずは棹の塗りを全て剥がします。補修部分だけ剥がすやり方もありますが、元々の塗りと新たに塗りなおす部分の境界の処理が難しいのです。近くで見ると艶感も異なってきます。遠目ではそれと気づきませんが、それだと所有者本人(補修者本人)が納得できませんので、やはり全て剥がして、棹全体を塗りなおすことにします。

耐水サンドペーパーの#180あたりを使い、棹のシェイプを崩さないように、全体を満遍なくサンドペーパー掛けしていきます。トゥーイ(野)にサンドペーパー掛けする際は、トゥーイが波打ったりしないように、サンドペーパーホルダーか、平らな木片にサンドペーパーを当てて行うようにすると良いでしょう。

#180よりも番手が荒いサンドペーパーを使うと、必要以上に棹を削ってしまいますので注意してください。ただし、元の塗りが厚塗りの場合は、#100位を使用しても良いかもしれません。ご自分の三線の塗りの状態を確認してから作業を進めてくださいね。

三線の棹
(塗りを剥がした状態)

 

棹の欠けた部分の成型

続いて、棹の欠けた部分を成型していきます。

欠けた相方がいないので、黒木の粉で成型します。
黒木の粉については、こちらを参照してください。→ 黒木の粉と瞬間接着剤

欠けた凹みに黒木の粉を少し盛り、そこに瞬間接着剤を垂らして固めます。これを何度か繰り返すことで、欠けた部分を埋めていくのです。

三線の棹の補修

瞬間接着剤で少しずつ盛り固めていって、カチンコチンに固まったら、サンドペーパーで削っていきます。

この時のサンドペーパーは、#240が良いでしょう。これは、この後のに地固めをする際に#240のサンドペーパーを使って研ぎを始めていくので、削った後の表面の粗さを合わせておくためです。

上はサンドペーパー掛けを行った後の状態です。どこが欠けていたのか判らない位になっていますね。

 

塗り

欠けた部分が上手く整ったので、ここから漆塗りの作業です。
私のやり方は拭き漆。
塗って、拭き取って、乾いたら表面を整えて、うすーい漆の被膜を何層にも重ねていきます。乾くのに1昼夜かかりますから、30回塗り重ねるとして、最低でも1か月かかります。

拭き漆についてはこちらもご参照ください。→ 黒木棹の補修③ ~拭き漆を施す

木地固め(下地塗り)

最初は、ベース作りのため、テレピンで薄めた漆を浸み込ませていきます。
テレピンで薄めた漆を浸み込ませ、塗り終えたらペーパーで拭きあげ、自作の漆室へ収納します。

漆は湿度と温度が一定以上ないと硬化しません。なので、湿度と温度を管理するための室が必要なのです。

棹の心の部分は塗らないので、こんな感じで室の中に収めます。

 

こうしておけば、猫の毛も付かないのでバッチリです。

漆塗りと拭きあげ → 一昼夜硬化 → サンドペーパー掛け
このプロセスを4回、サンドペーパーの番手を#240→#320→#400→#600 と細かくしながら進めていきます。だいたい1週間から10日くらいの作業ですね。

本塗り

木地固めが完了したら、いよいよ本塗りです。

かなり表面が滑らかになり、黒木ならではのしっとりした感触が心地良いです。
補修した部分はやはり漆の浸み込みが良くないですね。よく見ると判ります。
さあ、ここから拭き漆を重ねていきます!

本塗りでは、漆は薄めません。そのまま塗っていきます。

全体を塗って(芯以外)、塗った漆をふき取り、漆室で一昼夜硬化。これをひたすら繰り返していきます。

うっすーい漆の被膜を重ねていくので、塗りの回数が少なければ、木地も杢目を強調することができます。反対に漆の艶を出していきたい場合は、塗りの回数を重ねていく必要があります。

この時は、途中で木地のヒビを発見したため、塗り直しを行いました。このため、塗り直しも含めると、40回ほど塗りを繰り返してきたことになります。
途中出張ばかり続いてほとんど作業ができない期間もあり、7月から開始して3か月でようやく仕上がりました。

こちらが修復後の状態です。

修復前の状態よりも、塗り上がりが良くなっています。
棹に塗りを入れるのはこれで7挺目ですから、腕も上がっていなくちゃですよね。

札幌から戻って5か月。猫達も私の存在を思い出してきたようで、近くに寄っても威嚇しないようになってきました(笑)

猫が穏やかだと、家の中すべてが穏やかに感じられますね~(^^)

 

今日も最後までお読みくださり、ありがとうございました!