トーガニアヤグ

最高賞課題曲3曲のもう1曲が「トーガニアヤグ」です。
私が三線を始めた年に、初めて二揚げに取り組んだのがこの「トーガニアヤグ」だったと思います。今思うと脂汗が出ます(苦笑)

「トーガニアヤグ」とは

「トーガニアヤグ」は、正月や婚礼、新築祝いなどの祝儀の席で歌われる祝儀歌、宴席の幕開けに歌われる座開きの歌とされています。
“宮古の君が代”ともいわれるほどで、まさに宮古という国の国歌といえる格調高い曲です。

私が習っている「トーガニアヤグ」は3番まででひとつの曲となっていますが、『琉球列島 島唄紀行〈第2集〉』では7番まで掲載されています。
7番まで、というよりも“7種類の歌詞”と言う方が適切かもしれません。というのも、同書に掲載されている「トーガニアヤグ」の歌詞には、1番の歌詞に「宮古のあやぐ」、3番の歌詞には「お正月」、4番の歌詞は「御主が世」等とそれぞれに題名がつけられています。
また、同書ではトーガニアヤグの解説として以下のように書かれています。

宮古の抒情歌を代表する祝儀歌。歌の目的、場、性格によって「座敷様」と「カニスマ」に分類される。座敷様は(中略)祝宴などで格調高くうたわれる。一方カニスマは(中略)若者たちが集まり自由奔放な歌遊び、男女の交流の場でうたわれる特色を持つ。当然恋歌が多い。本来、座敷様、カニスマともに地域ごとの差があり、宮古の島々の個性がみなぎっている。

別の書物『宮古風土記』( 仲宗根將二 著)をみてみると、座敷様、カニスマ様は “どちらも即興的にうたわれる場合が多かった” とあります。
本島のナークニーのような曲だったのでしょうか? それによってトーガニアヤグに様々なバリエーションができたのか・・

一方、宮古文化芸能社の平良裕明氏によると、「カニスマ」とは もともと“楽器を使わないアカペラで歌われ、代々歌われてきたもの” であるとしています。
そういえば、宮古民謡に三線がつけられるようになったのは、ずいぶんと最近だと聞いたことがあります。

これらのことから考えると、、
宮古民謡の中でも「トーガニ」と呼ばれる抒情歌は、様々な状況で楽器を使わず即興的に歌われてきたもので、次第に歌詞や旋律が整ってきた。このうち祝いの席で歌われてきた「座敷様」が近代に至って体系化されて、今の形の「トーガニアヤグ」として歌われている・・
と理解できそうです。

中でも「春ぬ梯梧ぬ~」で始まる「宮古のあやぐ」は昭和に入って作られた歌詞のようですね。
宮古民謡そのものが、この100年位の短い間で急速に整えられてきたのかもしれません。

「トーガニアヤグ」の歌詞

一、大世(ウプユ)照(ティ)らし居(ウ)す
太陽(マティダ)だき国ぬ国々島(スマ)ぬ島々(スマズマ)
照(ティ)り上(アガ)り覆(ウスウ)いよ
我(バ)がやぐみ 御主(ウシウ)が世(ユ)や
根岩(ニビシ)どぅだらよ

この世をくまなく照らしている 太陽の如く大国や小さい島々まで
照り亘る太陽の事 我々の偉大な統治者の治世は 根をはる巌のようだ

二、春ぬ梯梧(デイグ)ぬ
花ぬ如(ニャ)ん宮古(ミャーク)ぬあやぐや
すうに島(ズマ)糸音(イチュニ)ぬ あてぃかぎかりゃよ
親国(ウヤグニ)がみまい 下島がみまい とぅゆましみゅでぃよ

春先に咲き香るデイゴの花のように宮古のこの歌は
糸をひくよな あまりにも良い歌なので
本国から世界の小さい島々までとどろかそう

三、十四日(トゥカユウカ)ぬ お月だき
十五日(ジウグニツ)ぬゆお月ぬ如(ニャ)んよ
上(アガ)ずかぎぬゆずかぎ 我達(バンタ)が国ヨー

十四日のお月のように
十五日のお月様のように
昇りくる美しいお月様は 私たちの国から

(歌詞・訳:国吉源次流 工工四より)

一般的なトーガニアヤグの歌詞と若干違う部分があるかもしれません。あくまで国吉源次流のものとしてご了承ください。

とくに1番の歌詞が圧巻ですね。
この部分、私が国吉源次先生のもとを訪ねるたびに、源次先生が歌詞の意味を解説してくれます。「この世の隅々まで照らしているというのは、日本だけじゃない、もうスケールが違うんだ!」と。それはもうすごいパッションで語ってくださいます。
「トーガニアヤグ」を語る時の源次先生を思い出すと、この歌は半端にはできないと思ってしまいます。

「トーガニアヤグ」(歌・三線:国吉源次)

その国吉源次先生が1974年の琉球フェスティバルで歌った「トーガニアヤグ」をYoutubeでみつけました。

沖縄のレジェンド達が一堂に会した伝説の琉球フェスティバルのステージで、源次先生はこの曲を選びました。
すごい迫力だと思います。

こちらは最近しきりに遊ぼうと誘ってくるボタン嬢。
そろそろ爪を切らなくては(^^;

 

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