黒木が一番? 棹の材質から見た沖縄三線

カマゴン

前回は型から三線を分類してみましたが、今回は棹の材質から見ていきたいと思います。
といっても、これは傍から見るととってもわかりにくいですね。

三線の世界では純粋に生物学的な種類で呼称しているわけではなく、産地の名前や通称で材種を分類しているようなんです。
これ、追及していくと迷路に入ってしまいそうなので、サラッと流していきたいと思います(苦笑)
ひとまず、三線店をまわると出てくる棹材の名前をザッと挙げてみましょう。ザッとですよ(笑)

黒木

いわゆる黒檀系の材種を総称して「黒木」(クロキ、沖縄の言葉でクルチ)と呼んでいますね。「リュウキュウコクタン(琉球黒檀)」に限って「クルチ」という場合もありますが、今は黒檀材のものを総称して「クルチ」と呼ぶ場合が多いようです。
学術的にいうと、カキノキ科カキノキ属といわれるそうです。これに分類されるものは世界に480種もあるそうですよ。
三線に使用される黒木としては、次のものが挙げられます。

八重山黒木

八重山で育った琉球黒檀ですね。沖縄では「エーマクルチ」と呼ばれ、現在流通している三線の中では最も高級とされる棹材です。
「沖縄の三線」や「三線のはなし」(宜保栄次郎)によると、王府時代から既に三線作り用として先島(八重山)から黒木がもたらされていたと書かれています。
八重山で育つ黒木はじっくり育つので実の詰まって三線の棹材として理想的であると聞いたことがあります。琉球黒檀は県内の多くの場所に植えられていますが、三線の棹に使えるほどの大きさに育つまでに数百年かかるともいわれていますから、その希少性もありますよね。
黒い部分と白い部分が美しく入り混じったような、墨を流したような杢目になっているものが多いですね。単に希少なだけでなく、その美しさも高値で取引される要因でしょうか。

戦前までは沖縄本島産の琉球黒檀でも作られていたようですが、現在はほとんど出回らないようです。大戦で多くが消失してしまったこともあるのでしょう。
琉球黒檀は高値で取引されるため、芯の部分がしっかり育つ前に伐採されてしまうことも多いようです。入手しようとする採集者が八重山や西表の原生林に絶えず出入りして、黒身の部分を確認するためにドリルで孔をあけられているそうです。古い家の床の間等に使われた黒檀も狙われているらしいですね。

縞黒檀

黒檀の中でも、黒い部分が縞のように入った材は「縞黒檀」と呼ばれています。「シマコク」と通称されこともあります。
分類的には、インドネシア原産の「マッカサルエボニー」がこれだと思うのですが、産地や学術名に関わらず、縞木が入った材をシマコクと呼ぶようですね。細縞、太縞など、杢目も様々です。

カミゲン

フィリピンのカミギン諸島で伐採される南洋黒檀の高級材が「カミゲン」といわれています。もともとは芯材が真っ黒のものをカミゲンと呼んでいたようですが、現在は杢の入ったものもカミゲンとして流通しているようです。
琉球黒檀の代替品として棹材に用いられてきた存在ですが、近年は伐採が制限されてきているらしく、希少価値が上がっています。
このため、フィリピン産に限らず、南方から輸入される良質な黒檀を「カミゲン」と呼んでいるようです。

カマゴン

もともとはフィリピンのカマゴン地方で育った縞黒檀を「カマゴン」と呼んだ、という説があります。
Wikipediaには、フィリピン原産で東南アジアで栽植されている黒檀の一種「ケガキ(学名 : Diospyros discolor )」のタガログ語名がカマゴン(Camagon)と書かれています。
また、Wikiの英語版には、フィリピン原産の黒檀の一種「Diospyros blancoi」=Kamagong(別名Mabolo)と書いてあります。
いずれにしてもフィリピン産の黒檀のことを指すようですね。
三線店によっては、縞黒檀のことも含めて「カマゴン」と呼んでいるところもありますね。
私は今まで4本のカマゴン棹を削りなおして塗ったことがありますが、1本は芯の部分が真っ黒でシラタが白く、導管が少なくてとても良質な材でした。東京の三線店の方から「それはヤイマですか?」と訊かれたことすらあります。あとの3本は、全体的に赤茶っぽい色で、真っ黒な杢目が所々に入っているものですね。導管が目立って夏ミカンの表皮のようにブツブツなものもありました。

カミゲンとカマゴンについては正直なところ定義が今一つよくわかりません。ヤイマと間違えられたほどの良材のカマゴンが印象に残っているために目が曇っているのかもしれませんね。
そもそも、ちゃんとした定義などないのかもしれません。
おそらくは、フィリピンを含め、南方からの輸入材のうち、黒味が強くて良質なものを「カミゲン」、黒味が少なくて赤茶っぽいものを「カマゴン」と呼んでいるのでしょう。
削った印象としては、カミゲンよりカマゴンの方が軟らかく、加工はしやすいです。音色もカマゴンの方がやさしい印象ですね。カミゲンは力強い感じがします。

紫檀系

紫檀はどちらかというとヤマトの三味線の棹に使われるイメージですね。
黒檀がカキノキ科であるのに対して、紫檀はマメ科の植物です。色は赤茶色~紫系。導管は比較的大き目なので、薄塗りだと表面がブツブツに仕上がってしまいます。
インドが原産で、棹材として流通している紫檀材の大部分が輸入品の「本紫檀」。
県内で育った「浜紫檀(ハマシタン)」もありますが、流通量が絶対的に少なく希少価値が高いです。ハマシタンは「沖縄の三線」でも1挺だけ収載されていますね。
紫檀系では他に「紅木(コウキ)」が使われることもあります。三味線の世界では高級棹材ですが、沖縄三線の世界ではあまり重用されていないようです。

ゆし(ユシ、ユシギ)

和名はイスノキ。沖縄ではユシやユシギと呼ばれています。
こちらはマンサク科のイスノキ属に分類されるんだそうです。
シラタは薄茶~薄紫系、芯材は茶系ですね。国内では九州から沖縄にかけて広く自生しているため古くから沖縄産のものが三線の棹材に使われてきました。
比較的太く育つため、シラタ(辺材)の部分だけで棹にされることもあり、流通量も十分だったことから、初心者用の三線に多く使われてきました。

<材木の断面>

ただ、辺材だけだと経年的にひねりや反りが出やすいようです。以前友人から調子が良くないと相談されたユシ辺材の三線は、心が40度くらい傾いていました。こうなると、なかなか厳しいですよね~。
芯材を使用しているものは「実入り」などと注記付きで販売されていて、比較的高価です。
最近では流通量が減って以前に比べて価格が高騰しているようです。
前回紹介した開鐘のうちの1本はユシで作られたものですから、音色も評価されてきたんですね。

産地や分類は本当に正しいのか??

現代における最高級品の八重山黒木とフィリピンのカミゲンは同じ品種だ、という説があります。
黒木はカキノキ属ですから小さな柿の実が成ります。太古の昔、八重山の黒檀の種を鳥が啄んで南の島に運んでいき、それがフィリピンのカミゲン島で育ったとしたら。。。あるいはその逆もあり得ますね。
フィリピン産のカミゲンが、流通過程で何かの間違いから県内産の中に紛れてしまったら・・・(大汗)
すみません、、変な妄想ですよね。

以前ヤフオクで「八重山黒木の三線」が10万円を切った価格で出品されていました。ホントかな?と思って出品者に尋ねましたら、「証明はできない」と回答していただきました。正直な方ですね。

さて、あなたがお持ちの八重山黒木の出自がはっきりわからず、夜も眠れないとしたら、、、
琉球三線楽器保存育成会というところが、沖縄県立博物館・美術館と連携して「三線鑑定会」を毎月1回実施しているそうです。
その道の専門家の方が鑑定して鑑定書を出してくれるそうですよ。

「三線鑑定会」実施のお知らせ(沖縄県立博物館・美術館のページに飛びます)

黒木信仰

「沖縄の三線」に収載されている612挺をみると、棹の材料は次の通りです。

  • 黒木 569挺
  • ユシ 38挺
  • 桑 2挺
  • 紫檀 1挺
  • 鉄木 1挺
  • 浜紫檀 1挺
  • 南方産の堅木 1挺
  • 不明 5挺

まずは黒木で作るのが三線のセオリーと言えるくらい黒木が多いですね。ついでユシが使われていますが、1割にもなりません。「沖縄の三線」の本文には“他は例外”とさえ書かれています。

「三線のはなし」では、黒木が好まれる条件として

  1. 制作後も変形が少ないこと
  2. 酷使に耐えトゥーイがすり減らないこと
  3. いい音を出すしなやかさ

が挙げられています。
これらの点が伝統的に支持されて、いつの間にか「クルチ信仰」といわれるまでになったと。

とくに「変形が少ない」というのは重要です。木材はふつう温度や湿度の影響を受けて時間とともに伸びたり縮んだり、曲がったりします。棹に狂いが生じると、もろに音に影響しますから大変ですよね。
反り方や捩じれ方によってはビビリ音が出たり、弦高が高くなって弾きにくくなったり、チルがまっすぐ張れなくなったり、いろいろと不具合が出てきます。

実際のところ黒檀は丈夫ですね。比重が高いですから、沈木(水に沈む木)といわれたりもします。それだけ中身がぎっちり詰まっているんですね。密度が高いので音が伝導しやすい、という話も聞きます。(音の伝導については別な考えもあるようです)
ユシ木の棹がわざわざ黒く塗られるのも、クルチ信仰の影響でしょうか。
そいえば、古典の合奏見てても黒い棹ばかりですね。

私(感化されやすい性格)は、紫檀の三線を持っていたころ「やはり黒木が欲しいなぁ」と思ってしまいましたが(苦笑)
まぁ確かに、真っ黒な木肌に本物の漆を塗り重ねていった時の、あの深い黒色は何ともいえず美しいんですよ、マジで。杢目の出る材とはまた違った美しさがあります。
今はユシ木の棹が良いなぁと思っています。私の先生がユシ木の三線も持っているのですが、柔らかで温かみのある音色に感じます。

まとめ

ということで、三線の棹材についてツラツラと書いてきましたが、三線の世界では「クルチ信仰」が根強いですね。
でも、黒木だから必ずしも自分の好みの音色になるとは限りません。
自分の好きな音色であれば、黒木にこだわらずに好きな音色の三線を選ぶのが良いと思います。
ということは、三線を選ぶときはやはり弾いて比べるのが良いのでしょうね。

ちなみに冒頭の写真の棹はカマゴンです。杢目が美しくて、女性的にも見えますね。実際、オーナーさんはとても素敵な女性の方です。

最後までお読みいただきありがとうございます!

参考:
・歴史資料調査報告書Ⅶ「沖縄の三線」(沖縄県教育委員会)
・三線の正型と名器の音色分析(沖縄県立博物館・美術館 園原謙 主幹)
・三線のはなし(宜保榮治郎)
木の情報発信基地
十三夜の月の音


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