初めて買う三線を考える

 

初めて購入する三線

「三線を続けていけそうだ」と思ったら、自分の三線が欲しくなりますよね。
初めのうちは教室やサークルで借りることができても、自宅で練習したくなってきますし、自分が気に入る道具が欲しくもなります。
では、最初に購入するのはどんな三線が良いのでしょうか?

三線は、伝統工芸士が手作りした高級品からお土産屋さんで販売している外国製のものまで、まさにピンからキリまでありますから、悩みますよね。

最初の選択肢

沖縄以外に住んでいて、三線を始めて少し経った頃に「買おうかなぁ」と考える時が来ます。そのときに浮かんでくる選択肢を挙げてみましょう。

a. 教室と提携している三線店の三線を買う
b. 近隣の三線店を探してみる(大都市の場合)
c. 沖縄に飛ぶ(要事前調査)
d. 教室の先輩に譲ってもらう
e. 信頼できそうな工房を見つけて相談する
f. 居ても立ってもいられずネットでポチる
g. 職人塾で自作する

自分の中での三線の位置づけ、自分の性格、予算、などなど条件は人それぞれですから、選択も異なってくるでしょう。

参考になるかどうかですが、、私の例をご紹介しますね。

私(参考情報: せっかち、物欲高い、形から入る、少しオタク、でも飽きっぽい)の場合、最初にとった行動は「f.居ても立ってもいられずネットでポチる(ヤフオク)」でした(笑)
その後 →a.→e.→現在の三線(三線職人塾で自作)と推移していきます。

最初の三線は、強化張り・黒塗り・初心者用・付属品(ソフトケース・チューナー・プラバチ)で15,000円くらいだったと思います。
家で練習したくて、とりあえずマイ三線が欲しくなったんですよね。今のように自分の中で三線のプライオリティが高くなるなんて思ってないから金をかけたくないし、でも蛇皮模様がプリントされた偽物チックな人工皮は嫌で、とか思っているうちに「え~い、ままよ!」とポチってしまいました。

届いたときは「おぉ~、三線だぁ、すげー」と思ったのですが、それは長く続きませんでした。当時通い始めたカルチャースクールの先輩達を見回すと、皆さん本皮張りの三線を弾いていたんですよ。で、日が経つにつれて目が肥え、「強化張り・初心者用」の貧弱さが気になってくるわけです。
そのカルチャースクールに入っていた三線教室の本部は関東全域に150以上の三線教室を持ち、自前の工房を持ってオリジナルの三線の製造販売も行っていました。先輩達のはそこのオリジナル三線だったんですね。それが弾きやすそうでカッコよく見えてくるんです。
2カ月ほど経った頃、「本部で三線特売会」のメールが回ってきて、私はまんまと陥落してしまうのでした(苦笑)
まぁ、それは後々後悔することになるのですが。。

その後、三線に関する様々な情報を集め、練習を続け、1年後に別の三線サークルに移ります。
1年前に惚れ込んだオリジナル三線は、オリジナルであるが故の不思議な部分がいろいろあることも判ってきました。何度も不具合が出たこともあります。
そしてネット上で三線工房を見つけ、手に入れたのが「カミゲン、シラタなし、真壁型大特価!」の三線だったのです。(参照記事:私が三線作りを学んだワケ ※こちらの「なぜ職人塾に?」の項)
これについては別の項で書きますね。

で、どれがお勧めか

今の私が当時の自分にアドバイスするなら、「e.信頼できそうな工房を見つけて相談する」を勧めるでしょうね。
でも無難なのは「a.教室と提携している三線店の三線を買う」でしょうか。

a.の良いところは実物を見て触って購入できることです。自分が選んだ教室なり先生の紹介があると安心ですよね。トラブルが起きたときも対応してもらえそうです。
ディメリットを挙げるなら、沖縄の工房で買うより割高ということですね。三線店は自前の工房がない限り工房から仕入れて利益を乗せて販売します。東京等の都市部は下町でさえ家賃やらが高いですしね。感覚的には、沖縄の工房で入手する金額の1.5~1.8倍くらいですかね。

「b.近隣の三線店を探してみる」も実物を確認して購入できますが、東京や名古屋、大阪などの大都市圏以外では難しいですね。メリット・ディメリットはa.に準じます。

「c.沖縄に飛ぶ」は、うまい選択ができれば、最もお得な入手方法になると思います。ただ、ある程度時間をかけて三線の知識を入れておく必要があるでしょうね。あるいは三線の知識のある方が同行してくれると心強いです。同じクオリティの三線でも三線店によって値段がマチマチだったりしますから、価格感覚も必要です。
できあがった三線を買うのか、工房で棹材を選び制作してもらうのか、といったこともあります。できあがった三線なら、音色を確かめることができますから、実際に何本も弾いて自分の好きな音色を選ぶと良いですね。新たに制作するなら、じっくり相談ができる工房を選ぶことが必要です。

「d.教室の先輩に譲ってもらう」の場合、入って間もない教室で譲ってもらうのは、有償・無償を問わず勇気がいりますね。自分の希望をなかなか伝えにくいでしょうし、後で気に入らなくなったら処分に困ります。
私は三線を有償で後輩に譲ったことがありますが、譲る側としても「この人なら使ってもらいたい」という気持ちが生まれて譲りますので、やはり入って早々の方に譲るのは難しいですね。

「e.信頼できそうな工房を見つけて相談する」は何といっても「信頼できる工房」と出会えるかどうかが問題です。私自身、痛い目に遭いましたから(苦笑)
今であれば、信頼できる工房が何か所かあります。いずれも皮張りや修理などで何度もお世話になり素晴らしいと思った工房です。おいおいご紹介していきますね。
逆に「ここにはもう頼まないだろうな」というところもあります。
本当にいろいろですね。

「f.居ても立ってもいられずネットでポチる」は(笑)、、、これはこれでありだと思います。
とりあえず手持ちを確保したい、そのうえで練習しながらじっくり三線のことを理解して、自分のお気に入りを探す、あるいは気に入るような三線を制作してもらう。
時間がかかりますが、自分が納得する1丁を入手するには一番の近道かもしれません。

「g.職人塾で自作する」の最初から自作するって、冗談でしょ?と思うかもしれませんが、私が職人塾に行った時の同期の一人がそうでした。
女性の方で、仕事を引退されてこれから三線を習うにあたりまずは自作しに来た、ということでした。
真壁型の三線をきれいに仕上げていましたよ。すばらしいですね。

「オリジナル」に気を付けよう

三線店が独自色を出して棹の形状を変えたり、棹にロゴを彫ったり、ある機能をつけたりして「オリジナル」として販売している三線があります。
納得して購入する分には良いのですが、知識がなく見分けがつかないうちに「オリジナル」を購入すると、後になって普通の三線との違いが気になってくるかもしれません。

上の私の例で紹介した「オリジナル」の三線は、胴の形が普通のものより丸に近い形状で、カラクイの糸蔵に入る部分が金属製、猿尾から棒を差し入れると音量が小さくなる消音機能付き、胴と棹が接着してあり外せない、といったものでした。
沖縄の唄者に「なんでその三線は丸いの?」と言われるまで気付かなかったんですけどね。
知らなきゃそれはそれで良いことなのかもしれませんが、よく理解してから選ぶことをお勧めします。

少し高めの三線を買っておく

f.を除いて共通して言えるのは、予算よりも少し高めのものを買うと良いということでしょうか。この「少し高め」ということが、より上を目指したり継続していく意欲を刺激してくれるはずです。

最初にお勧めするのは7万円前後くらいの三線です。沖縄であれば、黒木(カマゴンですが)で本皮張りの三線が買える工房があります。この価格帯だと塗りは本漆ではないですが、東京で買うと確実に10万円オーバークラスのものが買えます。
できれば黒塗りしていない透明塗りの棹を選びましょう。黒塗りした棹だと、材の良し悪しがわかりません。心を見ればだいたいの色目や杢の想像がつきますが、塗りの下でどれだけ補修されてるかが判断できません。透明塗りであれば、大きな傷を直した痕や別の材料を接いだ痕が判断できると思います。(それでも慣れてないと気づきにくいですが)
多少の補修跡は仕方がないとして、接がれたりしていなければ長く使っていけるはずです。接いである材は、接ぎ方が悪いと接着部がはがれる可能性もあります。(経験あり)
それらをクリアして好きな音色を入手できれば、所有感を満たしてくれますし、三線仲間の間でも見劣りすることもないですから堂々と弾けます。
もちろん、懐に余裕がある方はできるだけ高級なものを買うのが良いと思いますよ。

では、良い三線に出会えますよう祈っています。
最後までお読みいただきありがとうございました!

※写真の三線は、私が初めて依頼を受けて手掛けた三線です。塗りなしの棹を沖縄から仕入れ、削り直し、本漆を塗り重ね、歌口を削り、部当てをして、ティーガは自分で手縫いした革製です。
皮張りとカラクイ製作は沖縄の工房にお願いしました。依頼主さんからはとても喜んでいただきました。